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まいど24号「一括借上契約」について②借賃増減額請求権とリスク対策
2025年9月24日こんにちは。内藤でございます。
前回のブログでは、現在の一括借上契約が2025年11月30日までの2年間の契約であり、ファンド運用期間中に更新時期を迎えることから、特定転借事業者である積水ハウス不動産様(以下、「サブリース会社」)と事前協議を行い、現行賃料のまま、さらに2年間の契約を更新することが決定している旨をお知らせいたしました。
今回は、『借賃増減額請求権』とそのリスク対策について、ご説明させていただきます。

■ ファンドの出口戦略とリノベーションの判断
「まいど24号」ファンドの出口(運用満期時の取扱い)としては、再組成を予定しております。ただし、対象不動産はA棟が築48年、B棟が築39年と、いずれも築年数が経過しているため、最終的には更地にして売却することを想定しています。
そのため、運用期間中に退去が発生した場合、リノベーション(改修工事)を行うかどうかは、費用対効果を踏まえて慎重に判断する必要があります。
場合によっては、リノベーションを行わない可能性もあり、その場合、サブリース会社(積水ハウス不動産様)にとっては、新しい入居者を募集する際に、現在の家賃を維持することが難しくなることが予想されます。
このような状況では、借地借家法第32条第1項(借賃増減額請求権)が適用され、契約更新時以外でも、家賃の減額を求められる可能性があります。
なお、リノベーション工事等は、劣後出資の範囲で弊社にて実施する予定です。
■以下のいずれかの条件に該当する場合、家賃の見直し(減額請求)が行われる可能性があります。
①土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により不相応となったとき
②土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により不相応となったとき
③近傍同種の建物の借賃に比較して不相応となったとき
■ 契約解除に関する留意点
借地借家法により、サブリース会社は保護される立場にあるため、契約解除には正当事由が必要です。正当事由と認められない場合、契約解除ができないリスクがあるため、慎重な検証が求められます。
弊社では多角的な検証の一環として、サブリース会社様へ以下の内容について確認を行いました。
■ 積水ハウス不動産様への確認事項とご回答
以下は、サブリース会社様へ照会した内容とそのご回答です。
✅契約更新の拒絶について
照会内容:特定賃貸借契約において、借地借家法により特定転借事業者である貴社が保護されると理解しておりますが、契約期間満了の3カ月前までに更新拒絶の通知を行った場合、正当な事由がある際には違約金等が発生しないという理解でよろしいでしょうか?
回答:違約金等は発生しません。
✅賃料増減請求権について
照会内容:近傍同種の建物との賃料比較において、どの程度の乖離が生じた場合に賃料増減請求が可能となるか、具体的な事例を交えてご教示いただけますと幸いです。
回答:具体的に何円乖離時に請求するといった要件はありませんが、近傍同種の物件と5千円程度の乖離が見られる場合は入居者様毎の賃貸借契約の更新時(2年毎)に賃料増額について通知しております。
✅ 退去時のリノベーションと賃料減額請求について
照会内容:退去時にリノベーションを行わない場合、賃料減額請求を受ける可能性があると認識しております。
この場合、賃料減額請求は必ずしも受け入れる必要はなく、協議により相当な賃料が決定されると理解しておりますが、投資家様への情報開示の観点から、詳細なご教示をお願い申し上げます。
回答:築年数から原状回復工事の内容で再募集となると賃料が減額する可能性が高くなります。
借上契約の2年毎の賃料改定に際しましては実際に決定している家賃を基に改定額を提示させて頂きますので、減額請求をご承諾頂けない場合は契約解除の要件に該当します。
あくまで実際に決まった家賃以上の額で契約更新することはでき兼ねますので、家賃が下がらない施策についてご検討頂けますと幸いです。
✅賃料減額請求権およびリノベーションの拒絶について
照会内容:賃料減額請求権の行使に対して合意に至らず、またリノベーション(大規模修繕を含む)の実施を拒絶した場合、一括借上契約の解除は可能でしょうか?
回答:賃料改定の合意に至らなかった場合は、契約解除要件に該当しますので解約可能です。
リノベーションは賃料減額を回避するための施策と考えておりますが、実施の是非についてはオーナー様のご判断になります。
■ 今後の運用方針
一括借上契約の締結により、特段の自由がなければ契約期間中(2年間)は一定の賃料が支払われます。
ただし、賃料が保証されているわけではなく、契約に基づくものである点にご留意ください。
契約期間中に退去が多発し、フルリノベーション等の対応が必要となった場合、弊社がサブリース会社様の求める水準の工事を実施せず、物件の解体に向けて手続きを進める可能性もございます。
なお、借主に不利な契約上の特約は借地借家法により無効とされるため、契約解除には正当事由が必要となります。
そのため、解除にあたっては協議による合意が不可欠です。
弊社としては、サブリース会社様との良好な関係を維持しつつ、柔軟かつ誠実な対応を継続してまいります。
万が一、運用期間中にサブリース会社様より大幅な賃料減額請求があり、ファンドの想定利回りを下回ることが避けられない状況となった場合には、一括借上契約を解除し、自社管理へ切り替えも視野に入れて運用を行う方針であることを、事前にサブリース会社様へお伝えしております。
協議による合意が得られず決裂した場合などには、想定利回りを下回る可能性があることを、あらかじめご了承のうえ、出資をご検討いただけますようお願い申し上げます。
なお、現行の1戸(専有面積30.40㎡)あたりの平均賃料は以下の通りです。
・A棟が38,850円
・B棟が44,250円
※賃料には、共益費(金5,400円)が含まれています。
そのため、自社管理に切り替えた場合、転借人様が実際に支払われる賃料は、平均賃料を上回ると推定され、契約解除によって収益が向上する可能性もございます。
※近傍同種の物件(同エリア・同築年数)では、4.5万円〜5.5万円程度が相場と推定されます。
本ファンドは、安定収益の確保を重視しつつ、契約条件や市場動向に応じた柔軟な運用を行う方針です。
出資をご検討いただく際の判断材料として、ぜひご参考ください。
ご不明点や詳細のご確認をご希望の方は、お気軽にお問い合わせくださいませ。
最後までご高覧いただき誠にありがとうございました。